Apple iPhone 3G レビュー

Apple iPhone 3G一部の人にはすでにお知らせしたとおり、メインで使っている携帯電話を Apple iPhone 3G に先週から変更した。今週末に手に入れた人も多いようなので、一週間使ってきたところでのレビューを書いておこう。

ボクが買ったのは 16G ホワイト。ブラックのほうがデザインの完成度は確かに高いんだけど、和蓮和尚氏にブラックを見せてもらったときにやはり指紋が気になってしまった一方、Apple Store Shibuya で見たホワイトは指紋がまったく気にならなかったためホワイトとした。最初は「なんでこんな指紋がつきやすい加工にするんだ」と思っていたが、いざ使ってみると肌への吸い付きが良いことでiPhoneがするっと手のひらから滑り落ちる心配がかなり減っていることに気づいた。このべたつく夏場なら、開いた手のひらでiPhoneを75度ぐらいに傾けても滑り落ちる気配がなく、80度ぐらいまでがんばれる。幅が広いことは通常持ちにくさにつながるけど、この加工が底面のラウンド感も伴って電話するにもメールするにも持ちにくいと感じたことはまったくない。

さて、まずは iPod touch と決定的に違う電話機能についてだ。「顔の脂がべっとりタッチパネルにつくんじゃないか」という心配もあったが、iPhoneはフルフラットなために自然に持つと耳元しか接しない。逆にマイクが口元にないと不安な人にはちょっと問題かもしれないが……。音質が気になることはないけど、電波の受信感度は悪い。日本の携帯電話は電波状況を表すピクトが3本で当たり前、2本以下になるとほとんどまともに通話できないという甘い採点だけど、iPhoneは5本中3本ぐらいが当たり前で1本でも十分通話可能だ。とは言え、auから乗り換えた身としては建物の地下や地下鉄などでの圏外率は高くなった。また、地下鉄通勤者としては駅に着いたときに圏外から復帰するのが遅いのもかなり気になっている。

発信 / 着信については普通の携帯電話と “画面がでかい” ぐらいの差しかないけど、着信に応答するときに左のボタンが「拒否」で右が「通話」なのでたまに間違える。ボタンの大きさも同じだし……。ただ、留守番電話(ボイスメール)の実装はすばらしい。どの携帯電話キャリアの留守番電話もセンターに電話して数字で操作するという20年以上昔から変わらない方式を採用しているが、iPhoneではボイスメールとしてセンターから送信されてくる。そのため、誰からの留守録か一目で分かるし聞きたい順に聞けるしちょっとだけ巻き戻しとかも簡単にできる。住所録も固定化されたフィールドではなく、Mac OS X のアドレスブック同様に好きなようにフィールドを追加 / 削除できるので、ヒラギノ角ゴシックの美しさも相まってとても気分が良い。WindowsユーザーがOutlookと同期するとどうなのか分からないけど、少なくとも Mac OS X のアドレスブックとの同期はiTunesとiPodのような関係を気づけている。ただ、iPhoneから連絡先を直接登録するとグループ指定ができないのが謎だ。今後の実装に期待する。

さて、問題はメールだ。日本の携帯電話はメール文化で育ってきたこともあってだいぶ強化されているけれど、メール文化のない米国から来たiPhoneはそれに大きく見劣りする。まず、SoftBankから提供される@i.softbank.jpを使うにも自分でメーラーにIMAPの設定などを行わなければならない時点でケータイ世代にはあり得ない状況だろう。しかも、@i.softbank.jpは30日経ったメールは自動削除されるというIMAPのメリットも殺されている感じだし、サーバー側での自動転送設定できないし……。iPhoneが@i.softbank.jp宛のメールを受信したときはSMSで受信通知が送られてくるものの音もバイブも鳴らずに画面表示だけだし、それからは誰からのメールかは分からずにメーラーであらためて受信して初めて内容が分かる。受信は15分に1回などのようにPCメーラー同様に定期フェッチしているとはいえ時間差が最大15分あるため、地下鉄通勤者としては受信通知に気づいたけど圏外なためにメール本文が受信できないという状況が頻発しそうで使いもにならなそうだ。

@softbank.ne.jpなどのいわゆる普通のケータイ・メール的にプッシュで本文まで受け取るにはAppleの有償サービス、MobileMeの@me.comを使うか、米Yahoo! Mail の@yahoo.comを使うしかない。ただ、こちらはこちらで着信音がデフォルトの「ポン」という短い音しか選べず、バイブも「ブルッ」と0.5秒ほどしかならない。これに気づかないとホーム画面のメーラー・アイコンの数字を確認するしかなく、「ホームボタンを押す→ロックを解除」という動作をする必要がある。@i.softbank.jpの受信告知はホームボタンを押すだけで表示されるので、あとから気づくという点では@i.softbank.jpのほうが良いだろう。

MobileMeの同期サービスも気に入っていたので、ボクの場合は@me.comをみんなに告知し、MobileMeの自動転送設定で@i.softbank.jpに送ることで画面に受信告知を出しつつ音とバイブを短いながら鳴らしている。また、@i.softbank.jpが30日で自動削除されることを逆手に取って@i.softbank.jpはメール受信設定せず、完全にSMSでの告知用に使っている。なお、@me.comのプッシュはTCP/443にセッション張りっぱなしにするというかなりべたな実装になっている。Apple Push Notification Service はとても期待できそうな発表であったが、SMSでブートされてメールをプルする普通の携帯電話の実装のほうがスマートに感じる。

iPhone 3G はWi-Fiからも使えるためにIPアドレスだけではそれが携帯電話かどうか分からないためか、@i.softbank.jpのメールは NTT DOCOMO やauからはPCメールとして認識されているため、PCメール受信拒否している人は指定受信をお願いする必要がある。どのドメインを使ってもPCメールとして認識されるのであればいっそのこと@rewse.jpを使おうとも思ったのだが、@rewse.jpではSMSの受信告知もないしプッシュでの受信もせずに定期フェッチのみになってしまう。@rewse.jpから@i.softbank.jpと@me.comに転送すれば受信告知とプッシュ受信が実現できるけど、IMAPサーバーは@me.comだけどSMTPとFromは@rewse.jpなどのように手動で設定するとプッシュ受信がなぜか停止してしまうために、いちいち返信するときに手動でFromを変更するのも面倒なので@me.comをそのまま使うことにした。

絵文字の読み書きができないのはまーしかたないだろう。絵文字をRFCにしない携帯電話キャリアがそもそも問題だし、&のような実態参照にすればいいところを文字コードを混ぜるという気持ち悪い方法を採用しており、Appleが気軽にOKを出すとは思えないまさにガラパゴスな実装部分だ。しかもauの絵文字があると本文がmime-attachment.txtになってしまうという、iPhoneが悪いのか文字コードを混ぜるauが悪いのか何とも言いがたい現象も起きている。また、iPhoneはUCS-2文字集合のほとんどが入出力できるため、ISO-2022-JPで表しきれない文字を使うとUTF-8でメールを送信してしまい、UTF-8が読めないauで文字化けが起きる。これもiPhoneが悪いのかauが悪いのか微妙なところだ。なお、DOCOMOのデコメールやauのデコレーションメール、SoftBankのデコレメールはHTMLメールなのでiPhoneでも表示できる。というか、iPhoneのメーラーのHTMLパーサーはWebKitなので、HTMLメールのリーダーとしてはかなり強力だ。

ちなみに、「先頭または末尾の.(ドット)」「二つ以上連続する.(ドット)」はメールアドレスのローカル部分(@の左)に使えないことが RFC 2821 で決まっているものの、DOCOMOとauがそれを無視しているため違反メールアドレスが少なくなく、そのユーザーにメールを送信するたびに警告が出るのはDOCOMOとauに対する良いプレッシャーとなることだろう。というか、メールアドレスに記号を入れると迷惑メールが減るというのは迷信だから信じないように。

さて、メールにも深く関係する日本語入力だけど、2、3日もいじっていればすぐ慣れる。同じ「あ」キーを5回押して「お」を出すモンキー・タイピングよりも、テンキーで「あ」から下にフリックするだけで「お」が入力できるワンタッチ・タイピングのほうが慣れれば普通の携帯電話より速く入力できるようになるし、ソフトウェア・キーボードのメリットがよく出ている。両手が使える状況なら、フルキーボードにすればさらに速い。ただし、予測変換候補が出るタイミングがワンテンポ遅いためにリズム感が悪いので、ここは要チューニングだろう。

Safari(Webブラウザー)はFlashが読めないという痛い部分はあるものの、携帯電話専用のWebページではなくPC向けのWebページがそのまま読めるというのは想像以上に便利だ。たしかに携帯電話にもフルブラウザはあるがけど、あれの使いにくさは異常だし。会社の同僚とランチしているときに「△△部の○○さんはカワイイ!」という話になったものの会社に戻ってきたときには名前を忘れてて社員検索できないことはよくあるが、それがSSL-VPN経由でいつでもどこでもできてしまうのだ。便利すぎる。ただし、iPodで音楽聞いてSafariのフォームに日本語キーボードで文字入力しようとするとほぼ間違いなくワーク・メモリーが足りなくなって落ちたりフリーズしたりする。Safariはワーク・メモリーを食い過ぎている気がするので、この辺は今後のチューニングが必要そうだ。W-CDMA回線(3G回線。HSDPAなのかは不明)でのページ読込み速度はAmazon.co.jpのような複雑な構造だとイライラするけど、普通のページなら我慢の範疇で読み込めるだろう。

iPodとしては iPod touch でさんざん語られている部分であろうから簡単に。音質は iPod nano (3G) よりさらに良い。また、この画面の大きさなら字幕付きの映画も楽しめそうだ。また、iPod再生中に電話がかかってくると再生中の曲がフェードアウトして着信音がヘッドフォンから鳴る。また、プアなモノラルとは言え、iPod touch と違ってスピーカーが内蔵されているのがなにげに便利だったりする。

GPS搭載マップはGPSだけに頼らず3GやWi-Fiからも位置情報を得ているので、auのEZナビウォークより大体の測位は速い。ただ、ナビ機能はほとんど使い物にならないし、GPSが調子悪いことも多くいまいち使いどころがない。たしかにiPhoneの地図のUIはいいんだけど、機能としてはEZナビウォークだと思う。

iTunes Store / App Store / YouTube はiPhoneでちょっと見るには面白いけど、実際にはMacで見る機会がほとんどなのではないだろうか。なんというか、友人にiPhoneを紹介するときのデモ用って感じ。

カレンダーはボクの中でキラー・アプリになっているものの一つ。MobileMeを使用することで、Oracle Collaboration Suite 10g から Microsoft Outlook 2002 SP3 に読み込まれたカレンダー・データをほぼリアルタイムにiPhoneに表示でき、iPhoneで押さえた予定も同様に Oracle Collabration Suite に反映される。OutlookがMAPIを使ってカレンダー・サーバーに接続していることや、Outlookのバージョンが2002なことなどにかなり不安があったけど問題なく動作した。予定の詳細や公開レベルが反映されないものの、時間と会議名と場所だけでも十分ありがたい。なお、WindowsのMobileMeはプロキシーが通れないというほとんどバグな仕様であるため、Proxifierを使っている(参考: Apple: Discussions: MobileMe Through Proxy (on PC)

写真アプリは画面の大きさとフリックの操作性も相まってとても楽しいし、Apertureとも問題なく同期できる。カメラについては性能もイマイチだし、撮った写真が写真アプリ内で整理できなかったりするところもイマイチだ。

株価は日本の銘柄も表示できるけど銘柄コードで一覧されてしまうのがトホホだし、天気は翌日以降がいつも雷雨であまり信用できない。個人的には降水確率も知りたいしなー。とうわけでこれらはSafariのWebクリップをうまく使いたい。メモはなぜか知らないけど Mac OS X のMailのメモと同期しないのでこれまた使いにくい。計算機は最高。Cじゃなくて=がオレンジなのが気になるぐらいで、一般的な携帯電話の計算機の数十倍使いやすい。

サード・パーティ・アプリとしてはウィズダム英和・和英辞典駅探エクスプレスがすばらしい。どっちもよくあるアプリなのだが、そのiPhoneらしいUI実装は勉強になるだろう。ただし、残念ながらウィズダム英和・和英辞典はファイル容量が大きすぎるためにインストールで問題が起きるため、公開が一時停止してしまった。確かにボクもインストールできずにiPhoneを復元させて再インストールする手間があったが、辞書がキラー・アプリの人も多いと思うので早く改善してほしいところだ。というか、ウィズダムっていう選択もかなりすばらしいよね。今どきジーニアスだと萎えるもんなー。あとは新明解国語辞典の電子辞書化に期待だ。

さて、そのほかの点としては電池の持ちを書かざるを得ない。日本の携帯電話の電池ピクトは電圧で見ているためか3本が2本になったらもうあれよあれよと電池切れという感じだけど、iPhoneの場合は残り20%の警告が出てからもずいぶんと粘る。とは言え、ここ一週間は友人へのデモがちょくちょくあるとは言え、家に帰ってきたときには残り10%ということが頻繁に起きている。睡眠中は3GとWi-Fiをオンにして15分ごとのメール・フェッチにしててもほとんど減っていないので「無駄にぽちぽち触ってしまう点」「Safari」「地下鉄乗車中の圏外」のどれかが大きく電池を消費していると思われる。一日持たないのはさすがに不安なのでとりあえず SANYO eneloop mobile booster KBC-L3S を買ったけど、eftel FOMA dE Dock ET-T3000 とか ELECOM AVD-DCAA1 とかでも良いかもしれない。 実際に SANYO eneloop mobile booster KBC-L3S を使ってみると、5分ほどでL3Sが出力を停止してしまってiPhoneへの充電がほとんどできない。SANYO eneloop mobile booster KBC-L2S だと問題ないようだけど、SANWA DIRECT 400-BT001FILCO PowerBank slim などのiPhone対応をうたっているもののほうが良さそうだ。

それとかなり予想外だったのは Dension ice>Link Plus が使えたこと。iPhoneの画面に表示されている曲名が実際と異なるのは iPod 3G と同じであり、今度はついに充電もできなくなったけど、Alfa 147 のステアリング・コントローラーから曲を変えられて有線の音質が確保できているだけでも相当にありがたい。

まー、そんなわけでiPhoneの完成度は正直まだまだ高くない。コピペができないくせにメール本文に書いてある電話番号をクリックすると電話をかけちゃって住所録に登録できないとか、一度送ったメールをもとに編集して再送信できないとかで現場慣れしてないし、「ワーク・メモリーが圧迫されているからここで再起動」などを意識する必要もあるし、強制終了やフリーズも少なくない。ただ、それじゃぁ即iPhoneがダメってわけではなく、PC Watch: 本田雅一の「週刊モバイル通信」: 不満を抱えながらもiPhoneから離れられない理由 のとおり、ワープロ専用機 vs パソコンみたいなものなのだ。ワープロ専用機が欲しい人が当時のパソコンを買ったらがっかりするように、iPhoneは現状の携帯電話からのパラダイム・シフトを求めている人だけにまだとどめておいたほうがいい。その点でテレビによるiPhoneのあおりっぷりには困惑する。みんなの知っているiPodは確かに完成されているけど初代はやっぱり相当いろいろあったし、ましてや Mac OS X 10.0 なんて阿鼻叫喚もいいところだったわけで……。ただ、パラダイム・シフトの幅は相当なものなので、日本の携帯電話に飽きた人にはとてつもなく(苦労も含めて)楽しめるデバイスである。

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