使用と利用の違い

よく分からないで使っている日本語のひとつが、「使用」と「利用」である。これ、どうやって使い分けるの? というわけで辞書を引いてみた。まず、好きな人が多い広辞苑第五版

し-よう【使用】
①つかいもちいること。つかうこと。
②賃金を払い、あるいは権限で、他人を労務に服させること。

①は単に訓読みにしただけだろ! ②は「使用人」ぐらいしか当てはまらないしなー。

り-よう【利用】
①利益になるように物を用いること。役に立つように用いること。「廃品—」
②方便に用いること。だしにつかうこと。「人を—する」

差分を考えると “利益になるかどうか” が分かれ目のようだけど、「物を用いる」って「利益になる」と表裏一体じゃない? 「利益にならないように物を用いる」っていうシチュエーションがまったく想像できない。ちなみに「用いる」の①は「主君などが能力を認めてつかう。」で、「使う」の①は「あるじとして意向に従わせる。」で、私が広辞苑を好まない理由がよく表われている。いやまぁ間違ってはいないけど、それを①に持ってこないでくれ。

というわけで、やはりこういうときには新明解国語辞典第五版

しよう【使用】
—する
用事が有って使うこと。
[用例・作例]—中・—料・—済(ズ)み

りよう【利用】
—する
①本来そのためにあるわけではないものを、うまく使って△何か(自分)に役立たせること。
[用例・作例]廃物を—する。相手の無知を—する〔=いい事にして、ごまかす〕。いつでも他の本を—する。おやじの肩書を—する。—者・—客
②そのものの持つ利点を積極的に生かして使って、恩恵を受けること。
[用例・作例]水力を—する。飛行機を—して九州へ飛ぶ

「使用」の説明はいまいちだけど、「利用」は新明解らしい語釈。①と②はは両極端なことを言っている。どちらも利益にはなるけど、①は「本来そのためにあるわけではない」が重要で、②は「積極的に生かして」が重要だ。

例文を考えてみよう。「箸(はし)を利用して五重塔を作る。」本来、箸は五重塔を作るための部材ではないけれども、そんな箸を作って五重塔を作っちゃったよ!という感嘆の気持ちが込められている。「箸を利用してハモの小骨を取る。」フォークやナイフでは取れないハモの小骨も、箸なら取れちゃうよねーという箸の利点を強くアピールしている。「箸を利用してご飯を食べる。」おかしい。なんだかご飯を一粒一粒食べてる気がする。「箸を使用してご飯を食べる。」違和感がなくなった。箸本来の使い方ではあるがそれほど積極的に使っているわけではなく、自然な雰囲気が表現された気がする。

いやー、勉強になるなー。

The featured image is taken by Caleb Roenigk. Thanks.

7 thoughts on “使用と利用の違い”

  1. 「箸(はし)を利用して五重塔を作る。」は「うまく使」ってるように聞こえないところに違和感があります。また、「箸を利用してハモの小骨を取る。」も、ハモの骨を取るのに普通は箸を使うくらいしか思いつかないのにあえて強調されているところに、少し違和感があります。 =-o

  2. これ、日本語勉強中のアメリカ人が困ってました。彼はほかにも
    「なぜ one は いっ”ぽん” なのに
    two は に”ほん” で
    three は さん”ぼん” だ?」
    と聞くので

    「それは、eatの過去形がateになるのは何故と
    聞いているのと同じだ」
    と答えて逃げておきましたとさ 🙂

  3. 1st、2nd、3rdみたいなもんですね。でも、ぜんぶ「ぽん」でそろえちゃうのも、かわいくて良いかもしれません。

  4. 「箸を使用してご飯を食べる。」

    うーん。この用例は日本語として不自然…

    「利用」は対応するやまとことばがちょっと思いつかないけれど,「使用」という中国語には「つかう」というやまとことばがあるから,

    「箸を使ってご飯を食べる。」

    が自然かなぁ。

    僕って古い日本人?
    by 言語文学科出身 😎

    ところで,下の用例から何を想像しますか?

    a) トイレを使用中。
    b) トレイを利用中。

    a) はたぶん,用を足している。
    b) はたぶん,エッチなことをしている。

    ま,「利用」と「使用」の大きな違いは,新明解のとおり,やっぱりなにかを本来の目的以外に「使って」いるかどうか,でしょうか。

    広辞苑のイケてなさは,高等教育以降で日本語をかじると,実に身にしみます。

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